多要素認証(MFA)の種類と選び方:初心者にもわかりやすく徹底解説

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    多要素認証(MFA)の種類と選び方:初心者にもわかりやすく徹底解説
    作成日時 25/01/15 (09:24) View 378




    セキュリティ脅威が高度化する現代、企業や個人を問わず、アカウントやシステムの保護が最優先事項となっています。最近では、ランサムウェア攻撃や情報漏えい事件が多発する中で、多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)が効果的な防御策として注目を集めています。

     

    しかし、多要素認証にはさまざまな種類があり、それぞれの特性を理解せずに導入すると、期待通りの成果が得られません。本記事では、初心者の方でも理解しやすいよう、多要素認証の基本や種類ごとの特徴、さらには自分に最適なMFAの選び方を解説します。


    多要素認証とは

    多要素認証(MFA: Multi-Factor Authenticationは、異なる種類の認証要素を組み合わせて本人確認を行い、システムやアカウントへのアクセスをより安全に保護する認証手法です。

     

    昨今のサイバー攻撃は巧妙化し、パスワード単体ではもはや不正アクセスを完全に防ぐことは困難です。しかし、多要素認証を導入することで、たとえ1つの認証情報が漏洩しても、他の認証要素が壁となり、不正アクセスを防げます。

     

    多要素認証は、個人利用だけでなく企業のシステム保護にも活用されており、今や現代のセキュリティ対策に欠かせない手段です。
     

    二要素認証・二段階認証との違い

    多要素認証は、二要素認証(2FA)や二段階認証と混同されがちですが、それぞれに特徴があります。以下の表で違いを整理しました。

     

    認証方式

    特徴

    認証要素の種類

    セキュリティ強度

    多要素認証

    2つ以上の異なる種類の認証要素を使用

    知識情報、所有物、生体情報など

    最も高い

    二要素認証

    2つの異なる種類の認証要素を使用(多要素認証の一部)

    知識情報 + 所有物が一般的

    高い

    二段階認証

    段階を踏む認証方式。同じ種類の認証要素が使われる場合もある

    知識情報が多い

    多要素認証より低い



    たとえば、二要素認証では「パスワード(知識情報)」と「スマートフォンのコード(所有物)」を組み合わせます。一方、二段階認証は「パスワード入力後にメールで届く確認コードを入力する」といった方法で、同じ認証要素を使う場合があります。

     

    各認証方法の違いについては、こちらの記事をご覧ください。


    多要素認証における認証要素は3種類

    多要素認証の認証要素は、大きく「知識情報」「所有物」「生体認証」の3種類に分類されます。それぞれの特徴を理解することで、どの要素を組み合わせるべきかを判断しやすくなります。

     

    知識情報(知っていること)

    知識情報とは、利用者が覚えている情報を用いる認証方式です。最も一般的な例はパスワードですが、他にも次のような種類があります。

     

    ·        パスワード: アルファベットや数字、記号を組み合わせて設定される文字列です。ただし、「123456」や「password」のような簡単なパスワードは推測されやすく、安全性が低下するリスクがあります。

    ·        PINコード: 4桁や6桁の数字で構成される個人識別番号で、スマートフォンやATMなどで利用されています。

    ·        秘密の質問の回答: 「母親の旧姓」や「最初に飼ったペットの名前」など、個人的な情報を基に認証します。ただし、SNSで関連情報が公開されている場合、容易に推測される危険性があります。

     

    知識情報は設定が簡単で、特別なデバイスを必要としない手軽さがメリットです。しかし、情報が漏洩すると脆弱で、攻撃者に悪用されるリスクが高まります。このため、パスワードの強度を高める工夫や、他の認証要素との組み合わせが必須です。

     

    所有物(持っているもの)

    所有物は、ユーザーが物理的に所有するデバイスやツールを用いる認証方式です。知識情報と組み合わせることで、セキュリティを大幅に強化します。以下は代表的な例です。

     

    ·        スマートフォン: SMSや認証アプリで受け取るワンタイムパスコードを利用します。オンラインショッピングや銀行取引など、幅広いシーンで活用されています。

    ·        セキュリティトークン: 専用の小型デバイスがワンタイムパスコードを生成し、これを入力することで認証します。企業のシステムアクセスでよく使用されます。

    ·        スマートカード: 企業や政府機関で広く採用されており、カードリーダーを通じて認証を行います。

     

    所有物認証は、物理的なデバイスが必要なため、攻撃者がリモートで侵害することを困難にします。また、認証デバイスが利用者の手元にある場合のみ認証が可能であり、知識情報だけを使用するよりもセキュリティが高いです。

     

    一方で、デバイスの紛失や盗難が発生すると認証ができなくなるリスクがあります。このため、予備のデバイスを登録したり、デバイスを紛失した場合の再設定プロセスを準備したりすることが重要です。

     

    生体認証(本人であること)

    生体認証は、指紋や顔、声など、ユーザー固有の身体的特徴を用いる認証方法です。近年ではスマートフォンやノートパソコンに標準搭載され、普及が進んでいます。以下に代表的な方法を紹介します。

     

    ·        指紋認証: 指紋の一意性を利用した認証方法で、ATMやオフィスの入退室システムでも広く使われています。

    ·        顔認証: カメラで顔の特徴をスキャンし、データベースと照合します。スマートフォンのロック解除や支払いシステムで一般的です。

    ·        虹彩認証: 目の虹彩のパターンをスキャンする方法で、空港のセキュリティチェックなど、高いセキュリティが求められる場面で利用されています。

     

    生体認証は、複製が極めて難しいため、安全性が高いです。また、パスワードを覚える必要がなく、利便性にも優れています。一方で、次のような課題も存在します。

     

    ·        再設定が困難: 生体データが漏洩した場合、パスワードのように簡単に変更できません。

    ·        デバイス依存: 生体データが保存されているデバイスが壊れたり紛失したりした場合、認証ができなくなる可能性があります。

     

    生体データの保存については、デバイス自体に暗号化された形で保存する仕組みを活用することで、漏洩リスクを最小限に抑えられます。また、複数の認証要素を組み合わせることで、生体認証の課題を補完することが可能です。


    多要素認証の主な組み合わせ種類と具体例

    多要素認証は、認証要素をどのように組み合わせるかによって、その特徴や利用シーンが大きく変わります。以下では、主な認証の種類について具体例を交えながら詳しく解説します。

     

    知識情報と所有物の組み合わせ

    多要素認証で最も一般的な形式は、パスワードやPINコードなどの知識情報に、スマートフォンやセキュリティトークンといった所有物を組み合わせる方法です。この形式は、多くのオンラインサービスや企業システムで採用されており、利用者にとって馴染み深いものとなっています。

     

    例を挙げると、オンラインバンキングではまずパスワードを入力し、その後スマートフォンに送られるワンタイムパスコードを入力する手順が典型的です。この方法により、パスワードが漏洩しても、攻撃者がスマートフォンを持っていなければ認証を突破できません。同様に、リモートワーク環境では、社員専用のパスワードに加えて、ハードウェアトークンを使用することでセキュリティを強化します。

     

    この形式が広く普及している理由には、導入が容易であること、ユーザーにとって使いやすいこと、そして知識情報のみを使用する認証に比べて不正アクセスを防ぎやすいことが挙げられます。

     

    所有物と生体情報の組み合わせ

    所有物と生体情報を組み合わせた認証方法は、高いセキュリティが求められる環境で利用されています。

     

    企業のオフィスや医療機関では、スマートカードをリーダーにかざした後に指紋認証を行い、本人確認を行う仕組みが一般的です。また、高セキュリティが必要なノートパソコンでは、USBセキュリティキーを接続した後に顔認証を行いログインする方法が採用されることがあります。

     

    この形式の大きな特徴は、パスワードを使用しない点です。これにより、知識情報への依存を排除し、パスワード漏洩のリスクを回避できます。さらに、生体情報は複製が困難であるため、所有物と組み合わせることでセキュリティが格段に向上します。

     

    一方で、この形式には課題もあります。生体情報を正確に読み取るためのデバイスが必要であり、その導入や運用にはコストがかかる場合があります。また、デバイスが適切に動作しない場合や生体情報の変化(怪我など)によって認証が失敗するリスクも考慮しなければいけません。

     

    それでも、安全性と利便性を兼ね備えたこの組み合わせは、セキュリティが最優先される環境で広く受け入れられています。

     

    知識情報と生体情報の組み合わせ

    パスワードやPINコードといった知識情報と、指紋や顔認証などの生体情報を組み合わせた認証方法は、スマートフォンや個人用パソコンで広く普及しています。

     

    分かりやすい例だと、スマートフォンではPINコードを入力した後に顔認証を行うことでロック解除が完了します。また、Windows Helloのような機能を使えば、パスワード入力と指紋認証を組み合わせ、迅速かつ安全なログインが可能です。

     

    この形式の特徴は、所有物を必要としないため、デバイスの紛失リスクが発生しない点です。その一方で、知識情報が漏洩した場合には、セキュリティが低下する可能性があります。

     

    このリスクを軽減するためには、強力なパスワードの設定や、パスワードの定期的な変更を行うことが推奨されます。

     

    その他の複合型

    知識情報、所有物、生体情報の3つをすべて組み合わせる複合型の認証方法は、最高レベルのセキュリティを実現します。この形式は、金融機関や政府機関、軍事施設など、機密性の高い情報を扱う環境で広く利用されています。

     

    具体例として、社員証のスマートカードを使って所有物を確認し、次にパスワードを入力、最後に指紋や虹彩認証で本人確認を行うプロセスが挙げられます。このような複合型認証は、すべての要素を攻撃者が突破することが極めて難しいため、高度な防御策として適しています。

     

    一方で、認証プロセスが複雑になるため、ユーザーの負担が増える課題もあります。たとえば、複数ステップを完了するのに時間がかかることや、対応するデバイスやシステムの整備にコストがかかることが挙げられます。この課題を緩和するため、最近では一部のステップをシームレスに統合する技術が進んでいます。

     

    高い導入コストや複雑な運用を考慮しても、この形式の安全性は一部の業界にとって欠かせない要素となっています。


    多要素認証の種類を表で比較

    以下では、多要素認証の代表的な組み合わせ種類を比較し、それぞれの特徴を明確にします。

     

    認証の組み合わせ

    セキュリティ強度

    利便性

    主な利用シーン

    特徴と課題

    知識情報 + 所有物

    中程度

    高い

    オンラインバンキング、企業システム

    利用しやすく普及率が高いが、所有物の紛失リスクあり。

    所有物 + 生体情報

    高い

    中程度

    医療機関、施設の入退室管理、高セキュリティ環境

    パスワード不要で安全性が高いが、生体情報の登録コストが課題。

    知識情報 + 生体情報

    高い

    中程度

    個人デバイス(スマホ、PC)、従業員認証

    知識情報を覚える必要がある一方、物理デバイス不要で便利。

    知識 + 所有物 + 生体情報

    非常に高い

    低い

    金融機関、政府機関、軍事用途

    極めて安全だが、コストが高く運用の手間がかかる。











    適切な多要素認証の種類を選ぶポイント

    ここまで見てきたように、多要素認証は利用する認証要素の種類や組み合わせによってセキュリティの強度や利便性が異なります。そのため、導入時には自社のセキュリティ要件や業務環境に応じた選択が重要です。

     

    以下では、適切な多要素認証を選ぶための具体的なポイントを解説します。

     

    必要なセキュリティレベルの評価

    セキュリティレベルを決定する際には、まず守るべきデータやシステムの重要性を評価することが必要です。

     

    たとえば、金融機関や医療機関のように高度な機密データを扱う環境では、セキュリティの妥協は許されません。このような場合、「知識情報 + 所有物 + 生体情報」のような複合型の多要素認証が適しています。複数の認証要素を組み合わせることで、単一の要素が突破されてもシステム全体の安全性を維持できます。

     

    一方で、社内の一般的なシステムや個人向けウェブサービスでは、「知識情報 + 所有物」の組み合わせが現実的でしょう。この組み合わせは、適度なセキュリティと利便性を両立しつつ、導入コストも抑えられます。

     

    セキュリティレベルを評価する際には、リスクと利便性を比較し、適切な認証方法を選ぶことが重要です。高いセキュリティを実現するにはコストや手間が伴いますが、それに見合うリスク軽減効果が得られるかどうかを検討しましょう。適切なセキュリティ設計は、データ保護だけでなく、ユーザー体験の向上にもつながります。

     

    ユーザー体験を考慮する

    セキュリティがどれほど高くても、認証手続きが複雑でユーザーに過度な負担をかけるようでは実用性に欠けます。そのため、認証方法を選ぶ際には、利用者のスキルや業務フローに適合したものを選択することが重要です。

     

    リモートワークを行う従業員が多い場合、スマートフォンのワンタイムパスコードを使用する「知識情報 + 所有物」の形式が向いています。この方法なら、手軽に利用できるため、日常的にログイン作業が発生する業務に適しています。

     

    対して、オフィスや研究施設の入退室管理など、特定の物理環境での認証が必要な場合には、スマートカードや指紋認証のようにデバイスを活用する方法が効果的です。

     

    認証方法を選択する際には、セキュリティ要件と利用者の利便性を両立させることが不可欠です。ユーザー体験に配慮することで、セキュリティの実効性が高まり、システムがより効果的に機能するでしょう。

     

    インフラとコストを検討する

    多要素認証の導入には、デバイスやソフトウェアの準備が必要です。

     

    物理トークンは高いセキュリティを保証しますが、デバイスそのもののコストに加え、管理システムへの投資も必要です。また、これらのデバイスを配布・管理する手間や、紛失時の再発行コストも考慮する必要があります。

     

    それに対して、認証アプリやクラウドベースのソリューションは費用対効果が高く、導入が比較的容易です。この方法では、エンドユーザーの既存のスマートフォンやPCを活用できるため、初期コストを大幅に削減できます。しかし、エンドユーザーのデバイス自体がセキュリティの一部を担うため、デバイス管理やセキュリティ教育が重要な課題となるでしょう。

     

    導入に際しては、具体的な費用対効果を比較することが欠かせません。社員数の多い企業では、認証アプリを使用することで初期コストを抑える一方、高度なセキュリティが求められる環境では、物理トークンのような専用デバイスの導入が適している場合もあります。

     

    また、拡張性や運用コストも重要な要素です。今後のシステム規模の拡大やメンテナンスの容易さを考慮した選択が求められます。

     

    セキュリティの強度、導入コスト、運用負担のバランスを慎重に検討し、自社のニーズに最適な方法を選ぶことが、効果的な多要素認証の導入につながります。

     

    既存システムとの統合性

    新しい認証方式を導入する際には、既存のITインフラや業務システムとの統合性を慎重に確認しなければいけません。

     

    統合性を考慮しない場合、運用に大きな支障をきたすリスクがあります。例えば、既存システムと互換性のない認証方式を導入した場合、従業員がログインできない、既存のID管理が機能しなくなるなどの問題が発生する可能性があります。

     

    これにより、運用の混乱だけでなく、システム全体のセキュリティに脆弱性が生じる恐れも生じるのです。

     

    事前に確認すべきポイントとしては、使用しているプロトコルやAPIとの互換性、認証方式がクラウド型かオンプレミス型かによる対応の違い、また既存システムとのスムーズなデータ連携が含まれます。

     

    システム全体がスムーズに連携することは、ユーザー体験を向上させるだけでなく、セキュリティインシデントのリスクを大幅に低減する鍵となります。

     

    従業員トレーニングの実施

    従業員が新しい認証方法を正しく理解し、適切に運用できるようにするためには、徹底したトレーニングが不可欠です。特に、生体認証や物理トークンを使用する場合は、デバイスの使用方法やトラブル時の対処法を明確に説明する必要があります。

     

    トレーニングの具体的な方法としては、従業員全員に基本的な操作手順を理解してもらうためのマニュアルや動画を配布しましょう。その後、実際にデバイスを使ったシミュレーションを実施し、操作に慣れてもらう場を設けます。また、従業員が抱えがちな不安を解消するために、FAQを整備し、トラブルシューティングの方法を周知することも重要です。

     

    適切なトレーニングを実施することで、従業員が多要素認証をスムーズに運用できるようになり、システム全体のセキュリティ強度が向上します。結果として、従業員の生産性を維持しつつ、認証方式の変更による混乱を最小限に抑えることが可能です。

     

    多要素認証の種類に関するよくあるQ&A

    最後に、多要素認証の種類に関するよくある質問にお答えします。

    Q: 多要素認証とは何ですか?

    A: 異なる認証要素を複数組み合わせて本人確認を行い、セキュリティを強化する方法です。 

    Q: 多要素認証と二要素認証の違いは?

    A: 多要素認証は3つ以上の認証要素を使う場合もありますが、二要素認証は常に2種類の異なる要素を使用します。 

    Q: 二段階認証とは何が違うのですか?

    A: 二段階認証は、同じ種類の認証要素を2回使用する場合があり、多要素認証とは必ずしも異なる要素を使わない点が異なります。 

    Q: 多要素認証はどこで使われていますか?

    A: オンラインバンキング、リモートワーク環境、SNSECサイトなどで広く利用されています。 

    Q: 多要素認証の導入に特別な機器は必要ですか?

    A: 必ずしも必要ではありません。認証アプリやSMSを使う場合、既存のスマートフォンがあれば利用できます。 

    Q: 生体認証は完全に安全ですか?

    A: 生体認証は安全ですが、完全ではありません。例えば、指紋の複製や顔認証の誤認識などのリスクがあります。 

    Q: 知識情報の例を教えてください。

    A: パスワード、PINコード、秘密の質問の答えなどが該当します。 

    Q: 所有物要素にはどんなものがありますか?

    A: スマートフォン、セキュリティトークン、スマートカードなどが含まれます。


    まとめ

    多要素認証(MFA)は、サイバー攻撃が高度化する現代において、アカウントやシステムを保護するために欠かせないセキュリティ対策です。

     

    パスワードに加え、所有物や生体情報を組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減できます。企業は、それぞれの利用シーンに応じて最適な認証方式を選び、ユーザー体験やコスト、セキュリティ強度のバランスを取ることが求められます。

     

    さらに、多要素認証を効果的に運用するには、ダークウェブ監視などの補完的な対策も重要です。漏洩した認証情報が悪用されるリスクを早期発見し対応することで、セキュリティ効果をさらに高められます。

     

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