| 「Emotet」再来に備える 従業員教育とメールセキュリティの強化ポイント | |
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| 作成日時 26/01/20 (08:25) | View 182 |

近年、企業を悩ませてきたマルウェア「Emotet」が再び活動を活発化させています。Emotetは、単なるウイルスではなく「企業内のネットワークに深く侵入して情報を盗み、さらなる攻撃の足掛かりを作る」高度なマルウェアとして知られています。特に メールを起点とする感染 が多いため、企業にとってメールセキュリティ対策と従業員教育は極めて重要です。
本記事では、
・Emotetの最新の感染手口
・従業員が不審メールを見分けるための教育ポイント
・サンドボックスなどの最新メールセキュリティ製品の導入メリット
を、企業向け視点で徹底解説します。
1. Emotetとは何か?
Emotetは、もともとオンライン銀行詐欺を目的としたマルウェアでしたが、現在では メールを使った感染拡大・情報窃取・ランサムウェア攻撃への誘導 など多機能化しています。
特徴としては以下が挙げられます。
・感染するとアドレス帳やメール履歴を窃取
・実在の取引先・同僚の名前や過去メール内容を悪用した巧妙な攻撃
・二次感染としてランサムウェア「Ryuk」や「Conti」などと連携
・サーバー型ではなく「ボットネットネットワーク」を形成し復活しやすい
特に被害が増える時期には、企業のメールサーバーをターゲットとし、大量のフィッシングメールをばら撒きながら感染を広げます。
2. Emotetの「最新の感染手口」
Emotetは年々変化しており、従来の「マクロ付きWordファイル」だけではなく、最新の攻撃手口は非常に多様化しています。ここでは直近報告されている主な感染パターンを整理します。
2-1. 実在する企業名・担当者名を悪用した巧妙なメール
攻撃者は感染端末から以下のデータを盗み出し、攻撃メールに利用します。
・過去のメールのやり取り
・実際の署名ブロック
・添付ファイル名
・相手企業の担当者名
そのため、受信者は 「本当に取引先から届いたメールだ」と思い込んでしまう ケースが多発します。
2-2. OneDriveやSharePointを悪用した“正規サービスに見せかけた”手口
最近増えているのが、クラウドストレージを悪用した誘導です。
・OneDriveの共有リンク
・SharePoint Onlineのファイルプレビュー画面
・Google DriveやDropboxの共有URL
これらを装って、実際には 悪意あるZIPファイルやWindowsショートカット(.lnk)ファイル をダウンロードさせる手法が確認されています。
URLが正規ドメインに似ている、あるいは実際のクラウドサービスに見えるため、気付かずに開封してしまうケースが後を絶ちません。
2-3. パスワード付きZIPファイルによる検知回避
セキュリティ製品のスキャンを避けるため、攻撃メールに以下の手法が使われます。
・添付ファイルは暗号化ZIP
・本文にパスワードを記載
・ZIPの中にExcelマクロ、ショートカットファイル、スクリプトなどを格納
企業でよく使われる「パスワード付きZIP送付文化(PPAP)」が依然残っている組織ほど危険性が高まります。
2-4. HTML添付ファイル(HTML smuggling)
近年急増している手口として「HTMLファイル」を利用した攻撃があります。
・添付されたHTMLを開くとブラウザ内で自動的に不正ファイルを生成
・APIを利用してローカルにZIPやEXEを作成してしまう
・メールゲートウェイのスキャンをすり抜ける
この手法は高度で、従来のウイルス対策だけでは検知が難しいのが現実です。
3. 従業員教育で強化すべき「不審メールの見分け方」
Emotetは高度化しているとはいえ、人間の注意で防げる攻撃も多くあります。企業のメールセキュリティにおいて、従業員教育は最も費用対効果が高い対策の一つ です。
ここでは、教育すべきポイントを体系的にまとめます。
3-1. 「相手を知っているか」ではなく「メール内容が正しいか」を確認する
Emotet攻撃の多くは、実在する取引先や同僚の名前で送られてきます。
教育では次のような視点を徹底させる必要があります。
・過去のメール引用に見えても信頼しない
・「急いで確認してください」「至急対応」など焦らせる文面は注意
・添付ファイルの拡張子に注目(.html, .zip, .lnk など)
「知っている相手から来た=安全」ではないことを明確に伝えることが重要です。
3-2. ZIPファイルとHTML添付は“特に危険”と認識させる
一般社員にとって、技術的な説明は不要です。
教育では “危険度が高いファイル形式” を明示した方が効果的です。
例:
・ZIP(パスワード付きは特に危険)
・Excel(マクロ有効化要求)
・HTML(ダウンロード誘導)
・Windowsショートカット(.lnk)
教育資料に「実際の攻撃例の画面」を載せると認識が高まります。
3-3. メール本文中のURLは絶対に直接クリックしない
URLをクリックせず、次の手順を周知します。
・ブラウザから手動で公式サイトを検索
・正規の管理画面ブックマークからアクセス
・本当に必要ならIT部門に確認する
攻撃者は正規に似たドメイン名(typosquatting)を悪用します。
例:
・microsofft.com
・acc0unt-secure.com
・amaz0n-support.net
これらは一般の社員が一見では判断できません。
3-4. メールを「開く前」に件名で判断する習慣をつける
意外と効果的なのが件名で危険を察知する訓練です。
よく使われる件名例:
・ご確認ください
・請求書送付の件
・問い合わせの回答です
・Re:(返信を装う)
過去のやり取りを装ってくる点を繰り返し教育することで、注意力を高められます。
3-5. 社内の報告ルールを「簡単」にしておく
怪しいメールを見つけた従業員が 報告しやすい仕組み を整えるのも教育の一部です。
例:
・専用メールアドレス(security@xxx)を作る
・Outlookのアドインで「報告ボタン」を設置
・TeamsやSlackに専用チャンネルを作る
報告件数が増えるほど、組織全体のセキュリティレベルは向上します。
4. メールセキュリティ製品(サンドボックス等)の導入が不可欠な理由
Emotetがここまで企業を悩ませる理由は、「従来のメールフィルタでは検知できない攻撃」を行う点にあります。そのため、最新のセキュリティ製品の導入は必須です。
ここでは、特に企業が導入を検討すべき代表的な対策を整理します。
4-1. サンドボックスによる動的解析
サンドボックスとは、添付ファイルやURLを 安全な仮想環境で実行して挙動を調査する技術 です。
静的解析では検知できないマルウェアも、実行結果で判断できるため高い効果があります。
サンドボックスの強み:
・ファイルが開かれる前に検査
・マクロ・スクリプト・リンクファイルの動作を解析
・不審行動(外部通信・ファイル生成)を自動でブロック
特にHTML smuggling や .lnk ファイルには絶大な効果を発揮します。
4-2. URLリアルタイム検査
URLの最終着地点を解析する機能があるソリューション(Secure Email Gatewayなど)には以下が期待できます。
・クリック前にリダイレクト先を検査
・時限式攻撃(最初は安全→後から悪意のURLに書き換える)への対策
・フィッシングサイトの類似ドメイン検出
攻撃者はURLを時間差で書き換える手口を使うため、リアルタイム検査は非常に重要です。
4-3. DMARC/DKIM/SPF によるなりすまし防止
メールのなりすまし対策として、企業側は必ず以下を導入すべきです。
・SPF:送信元IPを認証
・DKIM:送信メールに電子署名
・DMARC:受信側に「拒否」「隔離」などポリシーを明確化
Emotetは実在の組織を偽るため、メール認証技術の実装は必須です。
4-4. クラウド型メールセキュリティ(API連携)
Microsoft 365 や Google Workspace を利用する企業は、API連携型メールセキュリティも有効です。
・メールボックス内での感染メール自動削除
・送信済みメールの不審挙動検出
・既に届いたメールの後追いスキャン
ゲートウェイ型では検知できなかった攻撃にも対応できます。
5. Emotet再来に備えた企業の総合対策モデル
企業が実施すべき総合的な対策モデルを以下に示します。
5-1. 技術対策
・サンドボックス搭載メールセキュリティの導入
・URL/添付ファイルの多層防御
・DMARC/DKIM/SPF の設定
・ウイルス対策のEDR化
・クラウドメールAPI連携セキュリティの活用
5-2. 管理対策
・セキュリティポリシーの策定
・不審メール報告フローの整備
・社内の適切な権限管理
・マクロ利用申請制度の導入
5-3. 人的対策
・定期的なフィッシング訓練
・受信者の心理を突く攻撃についての教育
・「メールは危険」という前提を持たせる
・新入社員向けのメール安全講習
三つの視点をバランスよく強化することが不可欠です。
6. まとめ:Emotet対策は“従業員教育”と“技術的対策”の組み合わせが最強
Emotetは単純なウイルスではなく、「組織の油断や脆弱性を突いて侵入し、横展開していく」複合的なサイバー攻撃です。
特にメールを経由した攻撃は、どれだけセキュリティソフトを導入していても 人のミス を完全に防ぐことはできません。
そのため、企業が取るべき対策は以下の2軸です。
1.従業員が不審メールを見抜くための教育を徹底
2.サンドボックスなどの高度なメールセキュリティ製品を導入
この両輪を回すことで、Emotetを含むメール型攻撃の大半を防ぐことが可能になります。
攻撃は今後も進化し続けます。
組織は「一度対策して終わり」ではなく、継続的な改善を行うことで初めて安全を確保できます。
Emotetの再来が騒がれる今こそ、メールセキュリティと従業員教育を強化する絶好のタイミングです。
また、Emotetのような攻撃で一度情報が窃取されると、メールアドレスや認証情報がダークウェブ上で売買・公開され、さらなる二次被害を招く恐れがあります 。技術的な防御や教育に加え、自社の機密情報が闇市場に流出していないかを常時監視する「ダークウェブ監視サービス」を併用することで、万が一の漏洩にも迅速な対応が可能になります。
見えない脅威をいち早く検知し、組織の安全をより強固なものにするために、最新の監視ソリューションの導入をぜひご検討ください。