| ブラウザに保存したパスワードが危ない!「インフォスティーラー」の正体 | |
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| 作成日時 26/02/24 (08:26) | View 73 |

多くの企業でクラウドサービスやSaaSの利用が当たり前となった今、業務の起点は「ブラウザ」になっています。メール、グループウェア、会計システム、顧客管理、開発環境など、日常業務の大半がブラウザ経由で行われていると言っても過言ではありません。
その利便性の裏で、近年急速に被害が拡大しているのが「インフォスティーラー」と呼ばれるマルウェアです。ランサムウェアのように業務停止を引き起こすわけではないため、侵入に気づかれにくい一方で、企業にとって致命的な情報流出の起点となるケースが増えています。
本記事では、インフォスティーラーの仕組みと被害実態、特にブラウザに保存されたパスワードや認証情報がどのように狙われているのかを解説します。また、二要素認証がなぜ必須なのか、企業が取るべき現実的な対策についても整理します。
インフォスティーラーとは何か
インフォスティーラー(Information Stealer)は、その名の通り「情報を盗むこと」を目的としたマルウェアです。
主な特徴は以下のとおりです。
・端末内の情報を静かに収集し、外部へ送信する
・感染しても業務が止まらないため、発見が遅れやすい
・盗んだ情報が二次・三次被害に利用されやすい
インフォスティーラーが狙う情報は以下のように多岐にわたります。
・ブラウザに保存されたID・パスワード
・Cookieやセッショントークン
・クレジットカード情報
・仮想通貨ウォレット
・VPNやRDPの接続情報
これらの情報は、単体でも危険ですが、組み合わされることで「なりすまし」「不正ログイン」「内部侵入」などの足がかりとして悪用されます。
なぜブラウザに保存したパスワードが危険なのか
多くのブラウザは利便性向上のため、IDやパスワードを保存する機能を標準で備えています。業務効率の観点では有用ですが、セキュリティの視点では大きなリスクを抱えています。
ブラウザ保存情報は一括で窃取できる
インフォスティーラーは、主要ブラウザ(Chrome、Edge、Firefoxなど)の保存領域の構造を把握しており、以下のような情報を自動的に収集します。
・ログインIDとパスワード
・自動入力用のフォーム情報
・保存済みのCookie
特にCookieやセッショントークンは、正しいID・パスワードがなくてもログイン状態を再現できるケースがあり、二要素認証を回避する手口にも利用されます。
「社用端末だから安全」は通用しない
企業端末であっても、以下のような経路でインフォスティーラーに感染する事例が増えています。
・メール添付ファイルの誤開封
・業務に関連しそうな偽サイトへのアクセス
・正規ソフトを装った不正インストーラー
・広告経由の不正ダウンロード
一度感染すると、利用者が気づかないまま情報が外部へ送信され続けるため、「いつ、何が盗まれたのか」を後から特定することは非常に困難です。
インフォスティーラーはランサムウェアの前段階
近年のサイバー攻撃では、インフォスティーラーが「単独の脅威」ではなく、「攻撃チェーンの一部」として使われるケースが目立っています。
典型的な流れは以下のとおりです。
1.インフォスティーラーで認証情報を窃取
2.VPNやクラウドサービスに不正ログイン
3.社内環境を探索し、権限を拡大
4.ランサムウェアや情報窃取攻撃へ移行
つまり、インフォスティーラーの被害を放置することは、将来的な大規模インシデントの「入口」を許すことに他なりません。
二要素認証はなぜ必須なのか
「パスワードが漏れたら変更すればよい」と考えるのは、もはや現実的ではありません。その理由の一つが、認証情報の流通速度です。
窃取された情報はすぐに売買される
インフォスティーラーで盗まれた情報は、短時間のうちに地下マーケットで取引されます。場合によっては、感染から数時間以内に第三者の手に渡ることもあります。
この状況では、パスワード変更が間に合わないケースも少なくありません。
二要素認証は被害拡大を防ぐ最後の砦
二要素認証(MFA)は、以下のような点で有効です。
・パスワードが漏洩しても即座の不正ログインを防止
・攻撃者の自動化ツールを無力化
・被害の早期検知につながる
特にクラウドサービス、VPN、管理者アカウントにおいては、二要素認証は「推奨」ではなく「必須」と捉えるべき対策です。
ただし注意点として、前述のとおりCookieやセッション情報を悪用する攻撃では、二要素認証をすり抜けるケースもあります。そのため、二要素認証だけに頼らず、多層防御の視点が欠かせません。
企業が取るべき現実的な対策
インフォスティーラー対策は、特別な高度技術だけでなく、基本的な対策の積み重ねが重要です。
ブラウザへのパスワード保存を見直す
・業務用アカウントは原則保存しない
・パスワード管理ツールの利用を検討
・グループポリシーによる制御
利便性とリスクを比較し、業務影響を最小限に抑えた運用ルールを定めることが重要です。
エンドポイント対策の強化
・EDRや次世代アンチウイルスの導入
・不審な挙動の可視化
・ログの継続的な監視
インフォスティーラーは「検知されにくさ」を前提に作られているため、従来型の対策だけでは不十分なケースがあります。
従業員への注意喚起と教育
・偽メールや偽サイトの事例共有
・「少しでも違和感があれば報告」する文化づくり
・インシデント発生時の初動対応ルール整備
人を責めない運用設計が、早期発見につながります。
侵入後を前提にした視点も重要
インフォスティーラーは「完全に防ぐ」ことが難しい脅威です。そのため、侵入を前提とした対策も欠かせません。
・どのアカウントが漏洩した可能性があるのか
・自社情報が外部で流通していないか
・次の攻撃につながる兆候はないか
これらを把握するためには、社内だけでなく「社外の視点」からの監視も必要になります。
まとめ:見えない情報流出にどう向き合うか
インフォスティーラーは、派手な被害を引き起こさない一方で、企業の信頼や事業継続を静かに脅かす存在です。特にブラウザに保存されたパスワードや認証情報は、攻撃者にとって極めて価値の高い標的となっています。
二要素認証の導入、端末対策、運用ルールの見直しといった基本対策を着実に進めると同時に、「すでに情報が漏れている可能性」に目を向けることが、これからのセキュリティ対策には求められます。
近年では、インフォスティーラーによって窃取された認証情報や企業データが、ダークウェブ上で取引・公開される事例も増えています。自社では気づけない情報流出の兆候を把握するためにも、ダークウェブ上の監視を含めた外部視点のセキュリティ対策を検討することが、被害の早期発見と拡大防止につながるでしょう。
見えないリスクにどう備えるか。その一歩として、自社情報が外部でどのように扱われているのかを把握する取り組みが、今後ますます重要になっていきます。