| ハッキングされたらどうなる?リスクと対処法を解説 | |
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| 作成日時 23/12/13 (09:04) | View 6288 |

ウェブサイトの改ざんや情報漏洩に関するニュースは日常的に目にしますが、それを自社の問題として具体的に捉え、備えている企業は多くありません。実際には、ハッキング被害は大企業やIT企業に限らず、中小企業や製造業、さらには地方の事業者にまで広がっており、もはや他人事では済まされない状況です。
被害内容は、単に情報が盗まれる、あるいはサイトが一時的に使えなくなるといった表面的な問題にとどまりません。業務や生産の停止、取引先との関係悪化など、企業活動全体に深刻な影響を及ぼすケースも少なくないのです。
「もし本当にハッキングされた場合、何が起こるのか」「被害を受けた際には、最初に何をすべきなのか」
これらを事前に理解しているかどうかによって、被害の規模や復旧までの時間に大きな差が生じます。
本記事では、ハッキングとは何かという基本的な理解から始め、ハッキングを受けた際に生じ得るリスク、実際に被害に遭った場合の対応策、そして未然に防ぐための現実的かつ実践的な対策について、専門知識がない方にも分かりやすく解説していきます。
ハッキングとは、コンピュータやネットワークのセキュリティを侵害して、不正にアクセスしたり、操作したりする行為です。
ハッキングには、主に以下の3種類があります。
● クラッキング:悪意を持って行われるハッキング
● ホワイトハッキング:セキュリティの脆弱性を調査し、改善するために行われるハッキング
● グレーハッキング:善意で行われる場合と悪意を持って行われる場合があるハッキング
また、ハッキングは、以下の手法で行われるのが一般的です。
● パスワードの推測:パスワードを当てずっぽうで入力する。
● パスワードの解析:パスワードを解読する。
● 脆弱性の悪用:システムの脆弱性を突いて侵入する。
● マルウェアの感染:マルウェアを感染させて侵入する。
サイバーセキュリティにおいて、被害を最小限に食い止めるための最大のポイントは、早期発見にあります。日常業務の中で感じる「いつもと何かが違う」という違和感はハッキングされた兆候かもしれません。
ここでは、侵入をいち早く検知するために見逃してはならない予兆を、3つの側面から詳しく解説します。
個人のメールやSNSアカウントは、攻撃者にとって最初の標的となりやすい領域です。以下の兆候はハッキングされた可能性があるため注意しましょう。
● 身に覚えのないパスワード変更・リセット通知
● ログイン履歴に見慣れないIPアドレスや場所
● SNSアカウントからの不審な投稿やメッセージ
● 友人や取引先からの不審な連絡に関する問い合わせ
業務で使用するPCやスマートフォンに現れる変化は、マルウェア感染のサインかもしれません。以下の兆候が現れたら感染を疑いましょう。
● PCやスマートフォンのパフォーマンス低下
● 予期せぬポップアップ広告の急増
● 見慣れないツールバーやソフトウェアの出現
● アンチウイルスソフトの無効化
直接的なアカウントやデバイスの異常だけでなく、外部の情報からも侵害を検知できる場合があります。主な兆候は以下の通りです。
● 身に覚えのないクレジットカードの請求
● 企業や個人情報がダークウェブで発見される
● 自身になりすましたメールが連絡先に送信される
ハッキング被害の最新状況は以下のとおりです。
警察庁による「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によれば、令和6年の不正アクセス禁止法違反の検挙件数は563件にも及びます。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴うテレワークの普及によりハッキング被害件数は増加しましたが、ここにきて生成AIの発展やサイバー攻撃のSaaS化などにより被害件数がさらに伸びると見込まれています。
ハッキング被害の中でも、特に深刻なのが個人情報や機密情報の漏洩です。顧客データや取引先情報、従業員の個人情報などが流出すれば、企業の信頼は一気に失墜し、法的・社会的な責任を問われる事態に発展しかねません。
2025年には、駿河屋やアサヒグループホールディングスといった大手企業において相次いで情報漏洩事件が発生し、大きな社会的注目を集めました。被害件数の増加だけでなく、被害規模も年々拡大しており、情報漏洩は企業にとって避けては通れない重大リスクとなっています。
ランサムウェアやマルウェアによる被害は年々増加しており、その手口も巧妙化・高度化の一途をたどっています。特に業務データを人質に取り、金銭を要求するランサムウェア攻撃は、企業の事業継続に深刻な影響を与える脅威として警戒されています。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、組織に対する最大の脅威として、ランサムウェアが引き続きトップに位置づけられました。中小企業から大企業まで、あらゆる業種で被害が報告されており、もはや対岸の火事ではありません。
ランサムウェアとマルウェアに関しては、以下の記事で詳しく解説しております。
・【初心者向け】 マルウェアとランサムウェアの違いと感染予防法を解説!
ハッキングがもたらす真の危険性は、その連鎖反応にあります。たった一つの資産(たとえばメールアカウント)の侵害が、企業の財務、事業運営、そして最も重要な信用を失う起点となりうるのです。ここでは、ハッキングがもたらす主な被害を整理します。
ハッカーの目的は、システムへ潜入し、知的財産や顧客情報を盗み出すことです。
たとえば、英国の貸金業者Wongaは、約25万人分の顧客記録を窃取されました。こうした機密情報の漏洩は、対象となった顧客をフィッシング詐欺などの二次被害に晒すだけでなく、企業に対しては法的責任の追及や社会的信用の失墜をもたらします。一度流出した情報の回収は不可能であり、失った信頼を回復するためのコストは甚大です。
また、窃取された認証情報はクレデンシャルスタッフィングと呼ばれる攻撃に悪用されます。これは、あるサービスから得たIDとパスワードのリストを使い、他のシステムへの不正ログインを試みる手法です。多くのユーザーがパスワードを使い回している実態があるため、一つのアカウント侵害が組織全体のシステム侵害へと連鎖的に拡大するリスクがあります。
さらに、盗まれたデータはダークウェブ上で犯罪者間の商品として取引されます。有効な認証情報がリスト化されて流通することで、別の攻撃者によるランサムウェア攻撃や不正決済の材料として永続的に再利用されることになります。
クレデンシャルスタッフィングに関する詳細は以下記事より。
・クレデンシャルスタッフィングとは?被害事例・仕組み・企業の対策を徹底解説
ダークウェブに関する詳細は以下の記事よりご確認いただけます。
・ダークウェブとは?歴史やアクセスの方法、企業の活用方法を解説
・深層ウェブ(ディープウェブ)とは?アクセス方法やダークウェブとの違いまで解説
ハッキング被害は、事業そのものが停止し、さらには自社が意図せずサイバー攻撃の加害者となってしまうリスクを招きます。たとえば、以下のような被害は強制的に事業活動を停止へと落とし込みます。
● 自社サイトの改ざん
● サーバー停止
● 管理画面の乗っ取り
● 生産ラインへの侵入
近年では、セキュリティが弱い中小企業や取引先を起点に、大企業などへ攻撃を仕掛けるサプライチェーン攻撃も増加中です。一例を挙げると、改ざんされた自社サイトを訪れた顧客や取引先のデバイスに対し、ウイルスを自動的にダウンロードさせる設定が仕込まれると、自社が被害者から「攻撃の踏み台」という加害者へと立場を転落させます。
ハッキング被害の代償として最も深刻なのは、一度失うと回復が困難な無形資産、つまり信用とブランドイメージへのダメージです。
情報管理の甘さを露呈した企業は、顧客や取引先からパートナーとしての適格性を疑われることになります。セキュリティ体制の不備は、そのまま事業継続能力の欠如と見なされ、安心して取引を続けたいと考えるパートナーを失う結果を招きます。
ハッキング被害が発覚した直後、最も避けるべきはパニックに陥り、場当たり的な対応をしてしまうことです。攻撃者は侵入後すぐに行動を起こすとは限らず、こちらが対応を誤ることで、かえって被害を広げてしまう可能性もあります。
ここでは、被害を受けた直後に取るべき基本的な対応を、3つの段階に分けて解説します。
1. 被害の封じ込め
2. 重要資産の保護
3. 復旧と信頼回復
まず最優先すべきは、攻撃の拡大を防ぐことです。ハッキングが疑われる、あるいはマルウェア感染が確認されたデバイスは、ただちにネットワークから切り離してください。LANケーブルを抜き、Wi-Fiもオフにし、他の機器への感染を防ぎましょう。
これは、ハッカーの横展開を阻止し、被害の局所化を図るために欠かせない初動です。
次に行うべきは、企業にとって最も重要な資産の支配権を取り戻すことです。
まず、保護すべきアカウントやシステムを即座に洗い出し、優先順位をつけて対応を進めます。代表メールアカウントやオンラインバンキング、クラウドサービスの管理者権限などは、最優先で確認すべき対象です。
この段階では、パスワードの変更より先に、すべてのセッションからの強制ログアウトを実行してください。そうすることで、ハッカーがセッションを維持したままアカウントを操作し続ける事態を防げます。
強制ログアウト後、クリーンな端末を使用して、新たに強力で推測困難なパスワードを設定し直します。
初動対応の最終段階では、感染したシステムの完全なクリーンアップと社内外への適切な情報共有を行います。
マルウェアの駆除は、セキュリティの専門家に相談した上で進めるようにしましょう。最も確実な方法は、重要なデータのバックアップを取ったうえで、OSを初期化することです。
現代のマルウェアは、表面的に削除されても内部に潜伏し続けるものが多く、再感染や情報漏洩のリスクを完全に断ち切るためには、抜本的な対処が必要です。
また、社内関係者や重要な取引先、知人・家族にも、アカウント乗っ取りの可能性があることを早急に伝えてください。あなたの名前で不審な連絡が届くことを想定し、決してリンクをクリックしたり、添付ファイルを開いたりしないように警告することが重要です。
透明性のある対応は、信頼の維持にもつながります。
ハッキング被害を未然に防ぐためには、特別な知識や高額なセキュリティ投資よりも、まず基本の徹底が欠かせません。ここでは、あらゆる企業が最低限実施すべき対策を紹介します。
多要素認証(MFA)とは、パスワードに加えて、SMSや認証アプリなど別の手段で本人確認を行う仕組みです。たとえパスワードが漏洩したとしても、攻撃者は次の認証ステップを突破できないため、不正ログインを大幅に防止できます。
とくにクラウドサービスや社内システムの管理者アカウントには、MFAの導入が必須と言っても過言ではありません。セキュリティ対策の基本でありながら、非常に高い効果を発揮する方法です。
多要素認証については以下記事で詳しく解説しております。
・多要素認証と二段階認証・二要素認証の違いをわかりやすく解説
多くの企業で見過ごされがちなのが、従業員のパスワード運用です。単純な文字列や使い回しは、ハッカーにとって最も狙いやすい弱点となります。そこで必要になるのが、専用のパスワードマネージャーの導入です。
専用パスワードマネージャーを導入すれば、従業員は複雑でユニークなパスワードを記憶する必要がなくなり、安全性と運用効率を両立できます。パスワードの生成・管理・自動入力まで一元化できるため、セキュリティリスクを大幅に減らすことが可能です。
OSやアプリには、セキュリティ上の脆弱性が含まれる場合があります。脆弱性を突かれると、ハッカーは簡単に不正アクセスできます。OSやアプリは、最新のバージョンにアップデートして、脆弱性を修正しておきましょう。
セキュリティソフトは、マルウェアなどの不正プログラムを検出して防げます。セキュリティソフトをインストールして、定期的にスキャンすれば、マルウェア感染による被害を防ぐことができます。
不審なメールやリンクを開かない
ハッカーは、不審なメールやリンクを開かせることで、マルウェアを感染させたり、個人情報を盗み取ったりしようとします。不審なメールやリンクは開かないようにしましょう。公共のWi-Fiを使う場合はVPNを利用する公共のWi-Fiは、セキュリティが脆弱な場合があります。公共のWi-Fiを使う場合は、VPNを利用することによって、データを暗号化して保護できます。
ここでは、企業の担当者や一般の方が抱きがちなハッキングに関する疑問について、簡潔にお答えします。
他人のシステムやネットワークに不正にアクセスし、情報の取得・改ざん・破壊などを行う行為を指します。
情報漏洩や業務停止、金銭的損失、取引先や顧客からの信頼失墜など、さまざまな被害が発生します。
身に覚えのないログイン履歴、不審な通信、設定の変更、勝手に送信されたメールなどが主な兆候です。
ネットワークから隔離し、重要アカウントの保護とパスワード変更を行った上で、専門家の助言を仰ぎましょう。
多要素認証の設定、パスワードマネージャーの導入、ソフトウェアの定期的な更新など、基本的な対策を確実に実施することが、最も効果的な防御になります。
業種や規模を問わず、すべての企業は「ハッキングは避けられない」という前提に立つ必要があります。そのうえで、ビジネスを守るために本当に重要なのは、次の3つの能力を備えることです。
● 1. 検知能力:攻撃の兆候をいち早く察知し、被害が深刻化する前に行動を起こす力。
● 2. 迅速な対応力:インシデント発生時にパニックに陥らず、冷静かつ的確な初動対応で被害を最小限に抑える力。
● 3. 防御力:技術・運用・人の各層で多層的な防御を構築し、将来の攻撃に備える力。
最終的に企業が目指すべきは、あらゆる攻撃を完全に防ぐ完璧なセキュリティではありません。重要なのは、攻撃を受けることを前提に、それでも事業を止めずに回復し、継続できる強さ、すなわち「サイバーレジリエンス」の構築です。
サイバーレジリエンスについては、以下記事で詳しく解説しております。ぜひ参考に、自社のセキュリティを高めてください。
・サイバーレジリエンスを強化する手順とポイントをわかりやすく解説