OTセキュリティとは?ITセキュリティとの違い、重要な理由、基本対策を解説

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    OTセキュリティとは?ITセキュリティとの違い、重要な理由、基本対策を解説
    作成日時 25/10/15 (09:08) View 3031




    スマートファクトリー化やIoTの導入が進むなか、セキュリティに不安を感じている情報システム担当者の方も多いのではないでしょうか。

     

    従来、製造現場は物理的に閉じた安全な領域とされてきました。しかし現在では、リモート監視やクラウド接続によって、外部ネットワークとつながることが当たり前になっています。こうした環境の変化を受けて注目されているのが、OTセキュリティ(Operational Technology Security)です。これは、製造ラインや装置の誤作動・停止・情報漏えいといったリスクから、制御系システムを守るための専門的なセキュリティ対策です。

     

    とはいえ、「ITセキュリティとは何が違うのか」「現場にはどのような対策が必要なのか」と悩まれている方も少なくありません。そこで本記事では、OTセキュリティの基本的な考え方、ITとの違い、製造業における重要性、主なサイバー攻撃の種類と対策までを、実務に即した視点で解説していきます。


    OTセキュリティとは

    貴社の工場やプラントでも、日々の生産活動を制御・監視するシステムが稼働しているのではないでしょうか。これらのシステムを構成しているのが、「OT(Operational Technology)」です。

     

    たとえば、工作機械や製造ライン、監視カメラ、センサーなどの制御機器、そしてそれらを制御するPLCやSCADAといった仕組みが該当します。OTは、生産活動に直結する設備を動かす中核技術であり、その停止は即座に大きな損失を引き起こします。

     

    OTセキュリティとは、これらのOTシステムに対するサイバー攻撃のリスクを最小限に抑えるためのセキュリティ対策のことです。


    OTセキュリティとITセキュリティの違い

    ITセキュリティとOTセキュリティは、どちらもサイバー攻撃への対策ですが、目的や扱うシステム、優先される価値が大きく異なります。以下の表に、主な違いを整理しました。

     

    項目

    ITセキュリティ

    OTセキュリティ

    主な対象

    情報システム(社内ネットワーク、PC、クラウドなど)

    制御システム(製造ライン、装置、PLCなど)

    主な目的

    情報の保護(機密性・完全性・可用性)

    装置の安定稼働(安全性・可用性)

    脅威の種類

    情報漏えい、不正アクセス、マルウェア

    誤作動、物理的破壊、事故や生産停止

    システムの更新

    頻繁なアップデートが可能

    停止が困難なため更新は慎重に実施

    優先される価値

    データの保護

    稼働の継続と人命・設備の安全

     

    このように、ITとOTではセキュリティの前提が異なるため、それぞれに適した対策が求められます。近年は両者の連携が進んでおり、IT部門とOT現場が協力してセキュリティを強化していく体制づくりが必要です。


    製造業においてOTセキュリティが重要な理由

    工場のスマート化やリモート監視、IoTセンサーの導入といった現場のデジタル化は、生産性やコスト面で効果をもたらす一方、OTセキュリティのリスクを急速に高めています。

     

    以前は外部と隔離されていたOTシステムが、ITネットワークと接続されることで、サイバー攻撃の侵入口が格段に増えているためです。製造業では、工場ネットワークをERPやクラウドと接続する例が増加しています。この構造により、IT経由でOTにアクセス可能な経路が生まれ、従来のIT対策ではカバーしきれないリスク領域が広がっています。

     

    加えて、法規制や業界標準の整備も見逃せません。経済産業省の「工場システムセキュリティガイドライン」や国際規格IEC 62443により、OTセキュリティは事実上の義務とされつつあります。取引先による監査やサプライチェーン全体での要求も強まり、対応を怠ればビジネスリスクが高まります。


    OTを狙う主なサイバー攻撃

    OT環境を標的とするサイバー攻撃は年々巧妙化し、現場に深刻な被害をもたらしています。とくに、製造業やインフラ業界では、停止が許されない設備が多いため、攻撃による影響はIT領域以上に大きくなりがちです。

    ここでは、OT領域で特に警戒すべき代表的なサイバー攻撃について紹介します。

    ランサムウェア

    工場の稼働停止や製品出荷の遅延を引き起こす、最も深刻なサイバー脅威の一つがランサムウェアです。大手製造業が被害を受けた事例を、ニュースなどで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

     

    ランサムウェアとは、システム内のファイルを暗号化し、その復旧と引き換えに金銭を要求するサイバー攻撃の一種です。ITシステムに感染したランサムウェアが社内ネットワークを通じてOT機器へ拡散すると、PLCやHMI、SCADAなどの制御システムが停止し、生産ラインが完全に麻痺する可能性があります。

     

    OT環境では、旧式OSや更新が滞ったシステムが残っていることが多く、ランサムウェアに感染しやすい構造になりがちです。さらに、感染後の復旧が困難なため、事前の侵入防止策に加え、ネットワーク分離やバックアップ体制の整備が不可欠です。

     

    ランサムウェアとは|仕組みや防ぎ方、駆除方法まで解説

    ランサムウェアの全貌|主な種類から最新攻撃手法、対策のポイントまで

    標的型攻撃

    標的型攻撃とは、特定の企業や組織を狙い撃ちにするサイバー攻撃です。

     

    従業員を巧みにだましてマルウェアを開かせるといった手口が多く使われます。製造業の場合、経営層や技術者などのキーパーソンになりすましたメールを使って攻撃を仕掛けるソーシャルエンジニアリングが増加中です。

     

    攻撃者はまずITネットワークに侵入・潜伏し、社内の構成やシステムの構造を把握したうえで、OTネットワークへのアクセス経路を探ります。そして最終的に、制御システムへのコマンド操作や設定変更、機器の停止といった攻撃を実行します。

     

    この種の攻撃の特徴は、発見が難しいことです。長期間にわたり潜伏し、攻撃のタイミングを慎重に見計らって行動するため、発覚した時点ではすでに大量の情報が流出していたり、装置が操作不能に陥っていたりするケースも少なくありません。

     

    また、ゼロデイ脆弱性を突いた攻撃も見られ、従来型のアンチウイルスでは検知が困難です。そのため、ふるまい検知やEDR(Endpoint Detection and Response)の導入が有効とされています。

     

    知らないと危険なソーシャルエンジニアリング|手法や対策ポイントを解説

    サプライチェーン攻撃

    サプライチェーン攻撃とは、自社ではなく取引先や外部ベンダーを踏み台にして侵入を試みるサイバー攻撃です。製造業では、設備保守や監視ソリューション、受託開発を担う協力会社が多く、こうした外部のつながりが攻撃の突破口となるリスクは常に存在しています。

     

    サプライチェーン攻撃の厄介な点は、自社のセキュリティ対策が堅固であっても、防ぎきれないことです。そのため、サプライヤーやパートナー企業に対しても、セキュリティ要件の明確化、監査の実施、アクセス権の最小化といった対策をしなければいけません。

    社内ネットワーク経由の感染

    社内のITシステムに侵入したマルウェアが、ネットワーク経由でOT領域へ感染するケースは後を絶ちません。これは、ITとOTが物理的・論理的に分離されていない環境で発生しやすい脅威です。

     

    たとえば、業務用PCがフィッシングメールをきっかけにウイルスへ感染し、共有ネットワークを通じて制御装置やHMIにまで拡散すると、製造ラインの異常停止やセンサーの誤動作といった事態を引き起こします。管理者権限を持つ端末が感染した場合、その影響範囲は極めて広くなります。

     

    OTネットワークは、たとえインターネットに接続していなくても、社内LANを通じた間接的な感染ルートが存在するため、IT側のセキュリティ対策だけでは不十分です。ネットワークの分離、アクセス権の制御、ログの常時監視といった多層的な防御策が必要になります。


    OTセキュリティの基本対策

    OT環境に対するサイバー攻撃は、ひとたび被害が発生すると生産停止や安全性の喪失といった重大な影響をもたらします。そのため、ITとは異なるリスク特性をふまえた独自の対策が必要です。

    ここでは、現場で今すぐ取り組める基本的なセキュリティ対策を、7つの視点から解説します。

    ネットワーク分離

    OTシステムにおける最も基本的な防御手段は、ITネットワークとの物理的または論理的な分離です。

    インターネットや社内LANと接続された状態では、外部からの侵入リスクを完全に排除することはできません。製造現場では、保守用端末や監視カメラなどを経由して、意図しない経路から攻撃が入り込む可能性があります。

     

    ここでいう論理的な分離とは、物理的にネットワークを切り離すのではなく、VLANの構成やファイアウォール設定などによって、ソフトウェア的に通信経路を制限する方法のことです。物理的な分離に比べて柔軟性が高く、コストや運用面でも現実的な手段として多く採用されています。

     

    具体的には、インターネットと接続されるIT領域を「レベル4〜5」、制御装置が配置されるOT領域を「レベル1〜2」と定義し、その間にDMZ(中間ネットワーク)を設けて通信を制御するといった具合です。

    このような設計により、現場の運用を妨げることなく、感染経路を限定できます。

    OT機器の正確な把握

    セキュリティ対策の前提として、自社のOT資産を正確に把握することが不可欠です。

    しかし現実には、「どこに、どの機器が、どう接続されているのか」が把握されておらず、ブラックボックス化しているケースも珍しくありません。とりわけ、長年稼働している旧式設備や導入当時の構成図が失われた装置には注意が必要です。

     

    このような状況を改善するには、資産管理ツールの活用が有効です。IPアドレス、機器名、接続ポート、ファームウェアのバージョンなどを可視化することで、リスクの棚卸しや対策の優先順位付けが可能になります。

    パッチ管理の計画的実施

    OT環境では、「止められない」「再起動できない」といった事情から、セキュリティパッチの適用が後回しにされがちです。しかし、未修正の脆弱性は攻撃者にとって格好の侵入ポイントとなります。

     

    マルウェアの中には、既知の脆弱性を狙って自動的に拡散するよう設計されたものもあり、放置することは極めて危険です。とはいえ、すべての機器に即時パッチを適用するのは現実的ではありません。

    そのためには、影響度の高い機器を見極めて優先順位を設定し、メンテナンス期間や工場の稼働計画に合わせて段階的に適用を進める運用設計が重要になります。

    不審通信・ふるまい検知の導入

    OTシステムは、ひとたび異常が発生すると手遅れになるケースが多いため、事前にいつもと違う通信や不自然な挙動を検知できる仕組みが重要です。

     

    従来型のアンチウイルスでは検出が難しいゼロデイ攻撃や内部不正に備えるには、ふるまい検知やNDR(Network Detection and Response)の導入が有効とされています。たとえば、通常は上位機器から下位機器へ送られるコマンドが、逆方向に発信された場合、それ自体が異常の兆候と見なされ、検知の対象となります。

     

    あらかじめ通信の正常状態を定義し、それに反するパターンを自動で遮断・アラートできる仕組みは、OT環境における最後の砦として大きな役割を果たすでしょう。

    ユーザーアクセス管理

    制御システムにアクセスできるユーザーや端末を最小限に制限することで、内部からの誤操作や不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。アクセス管理では、「誰が、いつ、どこから、何をしたか」を記録・監視できる仕組みが欠かせません。

     

    また、運用担当者・保守業者・開発者などの役割に応じて権限を細かく分け、不要な操作を制限するゼロトラストの考え方も有効です。さらに、USBや外部ストレージの使用制限も、併せて検討すべき対策の一つです。

    インシデント対応構成の構築

    どれだけ予防策を講じていても、サイバー攻撃を完全に防ぐことはできません。だからこそ、万が一に備えて、インシデント発生時の初動対応フローや復旧手順をあらかじめ明文化し、関係者間で共有しておくことが不可欠です。

     

    OT環境では、ITと異なり現場設備の停止や人命への影響が伴う可能性があるため、優先順位や判断基準を現場視点で定めておきましょう。

    たとえば、「被害範囲の特定 → 該当ネットワークの遮断 → 設備停止の判断 → 復旧ルートの確認」といった対応フローを、平時から訓練しておくことで、パニックを防ぎ、被害の拡大を最小限に抑えられます。

    社内教育

    最後に見落とされがちなのが、現場従業員のセキュリティに対する意識づけです。どれほど高度なセキュリティ機器を導入しても、それを無効にしてしまうのは、往々にして人間の誤操作や油断です。

    USBメモリの接続、不審なメールの開封、定められた手順を無視した更新作業などは、OT環境において致命的な事故を招く可能性があります。

     

    このリスクを抑えるには、現場職員や保守担当者を対象とした定期的な研修の実施、ルールの見直し、模擬訓練などを通じて、自分の操作が企業全体のリスクに直結するという意識を根づかせることが重要です。

    セキュリティ教育は一度きりで終わるものではなく、継続的な意識改革のプロセスとして位置づけ、計画的に実施しましょう。


    OTセキュリティに関するよくある質問

    OTセキュリティに取り組もうとすると、ITとは異なる用語や考え方に戸惑う方も多いのではないでしょうか。ここでは、現場でよく挙がる素朴な疑問や混同しやすい用語について、わかりやすく整理してお答えします。

    「OT」とはどういう意味ですか?

    OTは「Operational Technology」の略で、工場やプラントなどで機械や装置を制御・監視するための技術やシステム全般を指します。

    OTセキュリティとは?

    OTセキュリティとは、制御系システム(OT)をサイバー攻撃や不正操作から守るためのセキュリティ対策のことです。

    OTとITの違いは何ですか?

    ITは情報処理を対象にし、OTは物理的な機器や設備の制御を対象とする技術です。重視するポイントも、ITは機密性、OTは可用性や安全性が中心です。

    OTとICSの違いは何ですか?

    ICS(Industrial Control System)はOTの一種であり、産業用の制御システム全般を指します。OTはより広い概念で、ICSを含む実行技術全体を指す用語です。

    OAとOTの違いは何ですか?

    OA(Office Automation)は、事務作業や情報処理を効率化するIT領域の業務支援システムを指し、OTは製造・運用現場の制御や監視を担う技術領域を指します。


    OTセキュリティの強化は製造業の緊急の課題

    工場のスマート化が進み、ITとOTの境界が曖昧になる現在、OTセキュリティは業務継続や社会的信頼、取引維持に関わる経営課題です。製造業では、装置の停止や製品の不正制御が即座に操業停止・ブランド毀損・損失につながるため、後回しにできないリスクとなっています

     

    さらに近年では、制御パスワードやSCADA設定ファイル、リモートアクセス情報などがダークウェブで取引される事例も増えています。数千円〜数万円で情報が売買されるケースもあり、気づかないうちに扉が開いていたリスクは現実のものです。

     

    だからこそ、ネットワーク防御やユーザー管理に加え、ダークウェブ上の情報漏洩を常時監視する体制が重要です。弊社では、ダークウェブ監視の無料デモを提供しています。まずは御社のドメインや組織名に関する漏洩有無のチェックから始めてみませんか。



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